木漏れ日の約束
記憶
これは、お兄様たちに内緒で屋敷を抜け出した日のこと。
この日私は初めて屋敷の外の世界を知った。
いつも自室の窓から眺めていたので、屋敷の外には森があることは知っていたが、実際に森に入ると昼間でも薄暗く肌寒いということまでは知らなかった。
薄着で出てきてしまったので、少しでも暖かそうな日の光を求めて森の中を進むと、湖を見つけた。
木々のないこの場所は日の光に照らされてキラキラと輝いていた。
私の知っている外の世界は、屋敷内の庭だけ。今日初めて見る森の草木や花、キノコ、小動物など、すべてが輝いて見えた。
屋敷の外に出られないのは、私が病弱なため。外に出ることによって体調を悪化させないために、屋敷の中でおとなしく本を読むだけでは物足りなくなり、一人内緒で今日は抜け出してきた。
しばらく湖のほとりに腰掛けて輝く水面を見ていたが、暖かな陽気にウトウトし始めたので、仰向けになって目を閉じた。
森の木の匂いもぽかぽかとした日の光も何もかもが新鮮で心地よかった。
このまま寝入ってしまいそうなくらいだ。
心地良く目を閉じていると急に薄暗くなったような気がした。
天気が悪くなったのかと思い、ゆっくりと目を開けると、見知らぬ人影が2つ真上から私を覗いていた。