木漏れ日の約束
しばらく2人が去っていった方向を見つめていると、見慣れた人影がこちらに向かってくるのが見えた。
「クレア!!!」
兄のユリウス・フォルテスだった。
いつもの厳かな表情ではなく、今にも泣き出しそうな、初めて見る弱った顔だった。
「お兄様……?」
ユリウスはクレアを見つけるとすぐに走りこんできて、クレア抱きしめた。
「よかった、よかった…っ クレアっ」
いつもの威厳さが全く感じられない兄の声が気になったが、まずは勝手に出てきたことを詫びなければと思った。
「ごめんなさい…私、勝手に屋敷を…」
「………帰ろうか」
兄はそれ以上何も言わず、私の手を引いて屋敷に連れ戻した。
ここまでが、あの日の記憶。