碧空にキスを

オモイデ



あの日も、こんな風によく晴れた空だった。



上を見上げ立ち止まり、感傷に浸ってみると風は心地よく、まるで3年前のことは嘘だったかのようだ。



3年、という月日は私たちにはあまりにも長すぎた。



今となってはもうあの日の風の音も、陽射しの匂いも、微かな記憶の一部として残っているだけだ。



そのうち、君の笑顔さえも薄れていってしまうのかと思うと怖くて仕方ない。



だから忘れないように、携帯の待ち受けに写る顔をまた目に焼き付ける。



それから持ってきたビールの缶を一つ置いて、来る途中に買った白いチューリップを一輪添える。



自分の缶を開けるとプシュッと炭酸の弾ける音がして、大人の香りが風にのる。



私は乾杯の仕草を取って、少し飲んでみた。



苦い。



「…成人おめでとう」





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