碧空にキスを
ニチジョウ
「馬ッ鹿やろう!」
私が叫びながら冬麻(Toma)の頭を容赦無くぶっ叩く。
「いった!!ちょ、まじお前脳味噌潰れるからやめて!」
「こんな程度の衝撃で潰れる脳味噌なら潰れろ!」
そう言って更にビシベシバシと叩きつける。
「ま、まあまあ…その辺にしときましょう。本当、大丈夫ですから」
逃げ惑う冬麻を見て情けでもかけたのか用務員さんは水浸しになった女子トイレを背にそう言った。
「…ったく。すみません。きちんと掃除せますので」
どこの世界に花壇の水やりで手を滑らせて偶然目の前にあった女子トイレの偶然開いてた窓に偶然ホースが突っ込んで床ビッシャビシャにする男がいるんだよ。
偶然重なりすぎか。ここまで来ると褒めたくなる。
そもそも手を滑らせるってどんだけの水圧なんだっつーの。
そんなことを考えていても当然床は乾かないので、とりあえずこの馬鹿の尻拭いで私も掃除に加わるしかない。
「別にわざとやったんじゃねーよ」
「わざとだったら今頃ぶっ殺してるわ」
殺意を込めてモップを投げる。
毎度こいつの馬鹿っぷりにはほとほと呆れる。
今に始まったことではないが、昔から何かしようとすると必ずトラブルを起こす。
その後始末をするのは決まって私だ。
悪意が無いことはわかっているけどさすがにこっちの身にもなれ。
…まあさっきも言ったように仮に悪意があったのだとすれば、10年分の苦労を全て殺意に変えてなぶり殺す。
「…おい、顔、怖えよ」
「え?ああ、馬鹿のせい」
「なに?冬麻またやらかしたのか。あーったく、尻拭いする俺らの身にもなれよな」
羽空(Haku)、よくぞ言ってくれた!!
パチパチと拍手をすると冬麻からジト目で見られる。
「羽空いつも何もしねーじゃんか。ほら!ぼーっと突っ立ってねーで手伝え!」
今度は冬麻がモップをぶん投げると羽空はピキッと青筋を立てて
「てんめ、自分の所為なのに偉そうにしやがって…!そんなに手伝ってほしけりゃてめえを殺す手伝いならしてやるよ!逢(Ai)!ほらチャンスだぞ!」
一度受け取ったモップを投げ返し掴みかかる
…ところを寸前で止め、水に浸されたモップを拾って突きつける。
「うるせえわさっさと掃除しろ!早く帰りたいんじゃボケ!」
今日何回目かの怒鳴り声が女子トイレに響いた。