あの頃のキミは

カラン...

扉を開けるといつものように浅田さんが笑顔で迎え入れてくれた。

「こんにちは、友達あっちの通路の奥に来てるよ。」

「こんにちは、ありがとうございます。」

笑ったつもりだった。けど、

「...何かあった?泣きそうな顔してる。」

「え...と、大したことじゃないんです...心配させてすみません。」

あはは、と乾いた笑いがでる。

自分に気があると思ってた人が、実は学年1可愛い子が好きだったんです、
なんて恥ずかしくて言えるわけがない。


カフェラテください、と今度こそ笑顔で注文して席に向かう。


「あ、絵麻!こっちー、遅かったね?」

永井おーす、と冬夜くんも手をあげる。

「あ、うんちょっとぷらぷらしてて。勉強はかどってる?」

「それがさぁ、冬夜が無駄話してくるから全然...」
「なっんだよ、つぐみものってきただろー!」

言い合ってるけど、ほんっと仲いいなーこの二人。

笑ってそんな二人を眺めていると、浅田さんが飲み物を持ってきてくれた。

ん...?

可愛いラテアートの描かれたマグを置き、その横に苺のシフォンケーキを置いてくれた。


「浅田さん、わたし...」
ラテしか頼んでません、そう言おうとしてパッと顔を上げると

ないしょね、と口元に人差し指をあてている浅田さんと目が合う。

つぐみたちは、うわー美味しそう~とか言ってこちらは見ていないようだった。


...なんかモテるのわかるわ...てゆうか天然人たらし。


心の中で呟きながらシフォンケーキを口の中に放り込む。

苺の甘酸っぱさが口の中に広がり、スポンジ生地はスーッと溶けていく。

ホントおいしいな...

さっきまで凹んでたのに、おいしいものを食べるだけで心が少し明るくなる。


「よーし!やるぞー!」


急にやる気を出し始めた私に、二人が驚く。

「な...なんかわかんねぇけどやるか!」
と冬夜くんも拳を突き上げる。

が、

もともと頭のよくない私は練習問題にすぐ躓き

二人にびしばししごかれるのだった...。


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