あの頃のキミは
「あ、柴崎?そばに絵麻いる?」

電話の相手は柴崎だ。
今日足早に帰る絵麻は、柴崎の手を引いていた。

『大丈夫、今カフェに勉強に来てるんだけど、外に出てきた。なぜか冬夜も一緒だけど…笑』

冬夜、俺と別れたあとカフェに行ったのか…

「そっか、悪い…絵麻の事なんだけど」

そこまで言いかけて柴崎に遮られる。

『あのねぇー、皆見…なんで星野満里奈と会ってたのかは知らないけど、会うならもっと遠い所で会いなさいよね‼︎』

電話の向こうで柴崎の怒っている表情が想像できる。

やっぱりか…

「てことは、絵麻は俺たちが一緒にいる所を見たんだな…」

『そうよ!しかもカフェでお茶しててお似合いだった…とまで言ってたんだから!でも安心して、フォローはしておいたから。番号も教えてない相手なんだからって』

「ありがとう、柴崎…」

『それにしても、なんでそんな事になってるのよ…星野満里奈にそこまでしなきゃいけない理由って何…?』

「それがさ…聞かれてたんだよ、あいつに。俺と柴崎が話してるところ」

『はぁ⁈あのヒト気のない所で⁈盗み聞きしてたって事⁈』

「そう、で、絵麻にバラされたくなかったらデートしろと…」

デートなんて言葉は使いたくないが…

『っ、サイッテー…本当にあの女は…』

「絵麻、目も合わせてくれないからさ…柴崎には言っておくけど、あの1回だけでって話だし、何でもないから」

『うん、わかった。また何かあったら言って!」

「あぁ、ありがとう。それじゃ」

そう言って通話終了ボタンをタップした。


ふぅ…

本当に柴崎という存在が味方になってくれて有難い。

ただどうやって絵麻の誤解を解こう?

しばらくスマホを見つめていると、教室の外から声がした。

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