あの頃のキミは
私が記憶を無くしていること、凪くんには双子のお姉さんがいたこと、事故で亡くなったこと…
「それを…満里奈ちゃんが、凪くんから教えてもらったって…」
はぁーっとつぐみが大きな溜息をつく。
「本当に許せないわ、あの女。
…いい?聞いて、絵麻。黙っててごめん、実は私も皆見からその話は聞いていたの」
「…え?」
「私が皆見に絵麻のこと、どうするつもりなのかハッキリしなって問い詰めた時に…成り行きで…
皆見もいざという時に、近くにいる人間に知っててもらった方がいいからって、私に話をしてくれたの。
その時なのよ…星野満里奈が話を盗み聞きしてたみたいで…だから決して、皆見が直接彼女に話をしたわけじゃないの。するわけない、そんな事」
「そう…だったんだ…、でも…2人で出掛けてたのは?」
「あれも、1回デートしてくれたら黙っててあげるって言われたから仕方なく。まぁ、嫌だけどね?」
そこまで言われて血の気がサーッと引いていった。
私、最低だ…
凪くんの話をちゃんと聞かずに、勝手に頬を引っ叩いて、逃げて…
忘れていたのは私の方なのに…
「〜っ…どうしよう、つぐみ…最低だ、私…凪くんに酷い事ばっかりしてる…絶対、呆れてる…謝らないと…」
「…そう思うならさ、本人にちゃんと言ってあげなよ、ほら」
そう言われて顔をあげると、頬をハンカチで冷やしている凪くんと冬夜くんが公園の入り口に立っていた。
私は流れる涙をゴシゴシと拭い、凪くんの方へと向かおうとした。
「待って、絵麻。俺がそっちに行く」
つぐみが立ち上がり、入り口の方へ向かっていく。
「つ、つぐみ…行っちゃうの?」
「ちゃーんと2人で話しなね」
そう言いながら冬夜くんの方へ行ってしまった。
入れ違いで入ってきた凪くんは、私の隣のブランコに腰掛けた。