あの頃のキミは
あの時、確かに一緒にいた私たち…

でもそのうちの1人…私は記憶を無くしていて

凪くんは1人であの悲しみを背負っていたんだ…

ふと、小さい頃の凪くんと今の凪くんが重なった。

私はブランコから立ち上がり、自然と凪くんを抱きしめた。

「…ごめんね、1人で…悲しかったよね、淋しかったよね…」

「っ…」

肩を震わせる凪くんを更に強く抱きしめると、凪くんも私の腰を強く抱き寄せた。

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どのくらいそうしていただろうか。

長い時間に感じたけど、私が感じているほど長い時間ではなかったのかもしれない。

「ありがとう、絵麻…」

そう言った凪くんの目は赤かったものの、もう涙は流れてはいなかった。

「…思い出せてよかった…今までごめんね、なぎちゃん」

そう言って視線を空に送る。

「ん、あいつも喜んでるよ、絶対。俺も嬉しいし。あと…絵麻に何もなくて本当によかった…」

そう言って、はぁーっと溜息をつく。

「本当はもっとゆっくりと…こんな辛い思いさせるつもりなかったんだ…倒れてもおかしくない事なのに、本当にごめん」

「謝らないでよ…私はその頬を見てるだけで、申し訳なくなる…それに私、思い出したかったのずっと。凪くんに悲しい顔させたくなくて…。少しずつだけど、夢でもなんとなく小さい頃の記憶が出てきてて…それもよかったのかも…」

そう言ったのと同時に私と凪くんのスマホが揺れた。

「母さんからだ」
「お母さんだ」

思わず2人で顔を見合わせる。
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