あの頃のキミは
ガチャッ

「ど、どうしたの?凪くん…もう準備できちゃった?」

「あ、それはまだなんだけど…ちょっと屋上で話せる…?」

「?うん」

凪くんの頬には湿布が貼られていて、なんとも痛々しい姿だった。

2人でエレベーターに乗り込み最上階へ向かう。

うちのマンションの屋上は、囲いが高くなっていて住人達の憩いの場になるようにと小スペースではあるがいくつかベンチが設置されている。

屋上のドアを開けると、ちょうど夕焼けが綺麗に見える時間帯だった。

「うわぁ…綺麗。私、あんまり屋上くる事なかったけど…こんなに綺麗に夕日が見えるんだね!」

「そ。たまに来るんだよね。ここ、落ち着くから」

そう言って近くのベンチに腰掛ける。
凪くんは自分の座っている横をポンポンとたたき、私に座るように促す。

凪くんの真剣な表情に緊張がはしり、少しスペースを開けて浅めに腰掛ける。

「…遠くない?」
「へ⁈いや、だって…なんか…いつに無く真剣だから…緊張して…」

ちょっとムスッとした表情の凪くんに、どきまぎとした口調になってしまう。

「…それは、俺も少し緊張してるから…」
ふぅー、と凪くんが息をはく。

「あのさ、もうとっくにわかってると思うんだけど…俺は…」

そういうと、身体をこちらに向けた凪くんの綺麗な瞳が私を捉えた。

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