あの頃のキミは


「絵麻の事が好きだ。俺は、絵麻とならこの先何があっても乗り越えていけるって、そう思ってる。ずっと大切だったけど、これからもっともっと大切にする。だから…俺と付き合って下さい」

そう言って微笑む凪くんは、オレンジ色の夕陽に照らされて綺麗で私は目が離せなかった。

じわっと目の前が滲む。

そんなの…いいに決まってる…

「…はい!」

そう答えるのが精一杯だった。

その瞬間ギュっと抱きしめられた。

「よかった…。絵麻の記憶が戻ったら伝えようって思ってたんだ、ずっと」

そう言って少し身体を離すと、視線が絡み顔が一気に熱くなる。

ドキドキしすぎて、さっきまで出ていた涙も引っ込んでしまった。

「キス…していい?」

改めて口に出されると、急に恥ずかしくなりパッと目を逸らす。

「…沈黙は肯定とみなす…」

そういうと顎をクイっと持ち上げられ、艶然と微笑む凪くんと視線が絡む。

少し唇が触れたかと思うと、また啄むようにキスをした。

最後にチュっと音を立てて名残惜しそうにお互いの唇が離れていく。

切なそうな顔をする凪くんの色気に当てられクラクラする。

「今日はこれで我慢してあげる」

きょ…今日は⁈

い、いや…そもそも凪くん…
こんなキスの仕方どこで習ったの⁈

クラクラしながらも頭の中にそんな疑問が浮かんできた。
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