あの頃のキミは
気管に飲み物が入ったのは俺だけではなかった。

ゲホゲホゲホッ…

俺と絵麻は思わず顔を見合わせ、ジロリと冬夜と柴崎の方を見た。

2人は焦りながら違う違う!と勢いよく首を振る。

「あらー、バレないと思った?大人を舐めんじゃないわよ〜」

そう言って母さんは缶ビールをあおった。

「ぷはーっ…よかったじゃない〜、小さい頃から絵麻ちゃんの事大好きだったものね♡」

母さんは、酒が入ると余計にタチが悪くなる…

「凪早のことよろしくね〜、絵麻ちゃん♡何かあったらこの美佐ちゃんにすぐ相談するのよ〜!」

「は、はい‼︎」

「あ、それと…」

「まだ何かあるの…」

少し顔の赤くなった母さんを呆れながら見やる。

「18歳になるまでは過度な接触は避けっ、節度をわきまえて行動するように‼︎」

シーン…

場が静まり返る。
静まっているが、それぞれの表情を見るとさまざまだった。

冬夜と柴崎は顔が赤くなり、絵麻は赤くなりながら口をパクパクさせている。
絵理さんにいたっては笑いを堪えている。

いやいや、自分の娘のことだぞ⁈

「母さん…ちょっと黙ろうか…」

笑顔が引き攣るどころではない、怒りと恥ずかしさで震えてくる。

「え?なんで?大事なことじゃなーい!」

「今この場で言う事じゃないから!これでも黙って食べとけ!」

そう言って皿に母さんの大好物、いくら・ウニ・カニの寿司を盛り付ける。

どかっと置いて、興味を寿司へと移させる事に成功する。

きゃ〜!美味しそう!とか言いながら、もぐもぐと美味しそうに食べている母さんをみて、思わずため息がでる。

赤い顔のまま硬直してる絵麻にの耳元にコソッとフォローを入れる。

「…絵麻、心配しないでも絵麻がいいって言うまで待つから安心して」

バッと耳を押さえて何か言いたげにコチラを睨んでくる。

フォローしたつもりがフォローになっていない。

あ〜もう…
耳弱いんだなーとか、赤い顔してこっち睨んできたりとか…可愛すぎてどうしてもイジワルしたくなる…


「そこ‼︎イチャイチャしない‼︎てゆうか、俺だけ今回の件知らなくて、マジでへこむんだけど‼︎」

「あ〜、ごめん冬夜。冬夜、顔に出そうだったし…」

冬夜には、絵麻を追う時になんとなくどういう状況なのか伝えた。

「くっ…それは否定できないぜ」

素直すぎる反応に思わず笑みが溢れる。

「冬夜はさ、そのままでいてよ。これからは色々相談するし」

なぎさ〜!!俺は感動した!とか言って肩をガシッと組まれた。

「なーんか、性格は全然似てないけど…皆見と冬夜っていいコンビよね」

柴崎が冬夜の事を暑苦しそうに眺めながら、パクっと太巻きを口に入れる。

確かに…
フランスにいた時は割と落ち着いたタイプが多かったし、冬夜みたいなタイプは初めてかもな。

冬夜は人懐っこくて、裏表がない。
だからか一緒にいるのが楽なのだ。
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