桃の天然水‐桃天!‐
★+。:吉永隆司
俺は、吉永隆司。
自分で言うのもなんだけど、かなり演技の上手いやつだと思う。
有名進学校のこれまた有名な理数科で常に主席をキープし続けている俺は、そう、とりあえず順調極まりない生活をしている。
女の子達はみんな、俺の外見と人のよさげな話し方に騙されちゃってるし、先生たちは、成績優秀、品行方正な優等生だと勘違いしている。
親もまた然り。
あの人たちは、俺が成績でオール5さえ取っていればそれで満足らしい。
それから、世間体的に良いことの1つや2つしてれば。
俺が本当の俺になるのは、親友の伊藤俊平の前でだけだ。
俊平はいつも、
「お前って、人生退屈だろ」
とか言ってからかってくる。
まあ、まさにその通りなんだけどさ。
何でも思い通りになるし。
親父が医者だから金持ちだし。
だから、欲しいもの余裕で手に入るし。
学力にも困ってないし。
顔もまあいい方だと思うし。
「善良な面して、実は中身真っ黒だろ」
これも俊平の言葉。
良くわかってんじゃん、なんて軽口をたたき合ったのは、つい最近のことだ。