桃の天然水‐桃天!‐

「隆司ぃー」

教室に戻ると、囲まれる優等生の隆司君。
まあ、しょうがないよね。
俺、カッコいいもん。

自分で言ってもだれにも反論されないくらい、王子様キャラだし。

ま、演じてるんだけどさ。
気付かないなんてバカな奴ら。



「どこ行ってたのぉ?」
「うん?職員室だよ」
「えーどうしてぇ」
「なんでー?沙織も一緒に行きたかったぁー。渡辺先生に、用事あったのにぃ」



語尾を甘ったるく伸ばすのは、わざとなんか?
そのバカっぽいしゃべり方を聞くだけで、具合悪くなるんすけど。

てゆか、渡辺に用があったとか嘘だろお前。


「え、そうだったんだ?ごめんね…あ。じゃあ、後で一緒に行ってあげようか」

試しに言ってみると、沙織の顔色がさっと変わった。

「え、ううん、いいの!」

「王子様」の、親切な申し出を断るのか?
ほーらみろ、やっぱり嘘じゃんか。




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