桃の天然水‐桃天!‐
俺はまた軽く笑った。
デザイン科、ねえ…

制服はともかく、偏差値が一番低い科だ。
バカなのに読書家?
え、優等生読書家って、俺の間違いなのかな。
だったら、もう二度と来たくないんだけど。


「デザイン科の桃ちゃんが、なんでこんな遠い図書室に一人で?」


訊いてみると、桃ちゃんの顔が曇る。
あららー。
さしずめ、先生にお呼び出しってあたりかな。

「や、あのですね…授業中ちょっと…怒られちゃって…それで」


ドンピシャ?
やっぱ俺ってすごいなあ。あはははは。


そのとき、司書室との間のドアが開いた。


「あら、吉永君に、あなたは、…桃井さん?」
「こんにちは、江崎先生」


遅せえんだよ、センセ。
俺は意味もなく開いていた本を棚に戻しに席を立った。


「こ、こんにち、は」

桃ちゃんがどもりながら言うのが聞こえた。

「ふふ、こんにちは。話は間宮先生に聞いてるわ」

あー、間宮っちね。
ってことは、国語の授業中怒られてのか…
あの先生普段怒らないのに、珍しい。


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