桃の天然水‐桃天!‐
「うふふ~、やっぱり何度見てもカッコいい~」
ニマニマしながら写真を見てると、頭の中がぽわーっと白くなった。
ああ、素敵空想の世界があたしを呼んでるよー…
あたしは秘話秘話と地面から浮かび上がったかのような錯覚に陥って、ああ、なんて幸せなのかしらと柄にもない言葉遣いでひとりごちた。
「桃ってば!!」
「ほあ?」
りっちゃんの鋭い声で、ハッとして辺りを見回したら、たくさんの目があたしを見ていた。
いや~、大注目?
モテモテのモッテモテ?
「いやぁ、どーもどーも」
頭に右手を添えてペコリと頭を下げたら、冷たいオーラが漂った。
………あり?
すべった?
腕を組んで自分の行動を分析していたら、先生の冷たい声が刺さった。
「桃井、授業中に何をニヤついてたんだ?」
「………へ、授業中?」
りっちゃんの方からも、冷たいオーラが。
(「桃、指されてたの!!だから戻ってきてって言ってたのにー!!こんのアホ!!」)
口パクで非難された。
「疑問形か。いい度胸だな」
普段はいい国語教師の間宮先生が、鬼に見えた(や、寝てたのが悪いんだけど…)。
鬼の口が開いて、死刑宣告。
「お前だけ、放課後補習。図書室」
「そんなっ」
「はい、じゃーアホはほっといて、山田ー」
デザイン科、とは言っても、一応英数国の授業はあったりする。
それぞれ4単位。
それに付け加えて、美術4単位、デザイン5単位、被服5単位。
総合が2単位。これは、新作発表会や全校集会などに割り当てられている。
「………くそう」
「桃、また妄想でもしてたんでしょ?」
「妄想じゃないもん!!素敵空想の世界だもん!!」