桃の天然水‐桃天!‐
バイクで感じる夕方の風?ううん、夜風かな…
冷たくて、火照った顔を冷やすのにはちょうどいいみたい。
しばらくするとあたしも慣れてきたのか、あまり強くしがみつかなくてもバランスが取れるようになってきた。
運動神経が悪くないことがわかったことだし、体育の成績も、この調子で上がればいいのに。
信号で止まった。
ふと歩道を目に向けると、うちの学校の制服を着たカップルが、いちゃいちゃ絡み合いながら歩いていた。
うわー…
あの人たち、恥ずかしくないのかな?
ありえない…
ぼやーっとそんな風に思っていたら、カップルの彼女がこっちを見た。
彼氏さんの肩を叩いて、二人揃ってこっちを向く。
ええ、なに!?
「隆司!!」
彼氏さんが大きな声を出した。
「…」
隆司様は黙ってる。
聞こえないのかな、騒音多いし、ヘルメットごしだし…
「りゅうじー!!」
わわ、信号変わっちゃうよ。
あの人呼んでるのに。
あたしは勇気を振り絞って言ってみることにした。
憧れの人に話しかけるのは、いつだって勇気のいるものだ。
少なくとも、あたしにとっては。