桃の天然水‐桃天!‐
「せ、先輩?」
思ったよりも声が小さくて、だから聞こえるか一瞬不安に思った。
だけど隆司様はすぐに軽く振り向いて、
「どうかした?」
って笑った。
キュ、キュン死に…!!!
「あ、あ、ああ、あの!!さっきから、あの、歩道から先輩を呼んでいる人が!」
「…ああ、うん…いいんだよ、あの人たちはほっといて」
「へっ?」
あたしの間抜けな声と同時に信号が変わって、隆司様が行くよー、といい、そしてバイクは走りだした。
「ちょ!待てよりゅーじ!」
…やっぱり明らかに先輩を呼んでるよね?あの人。
「よ、良かったんですか?」
「いいのいいの。…次どっち?」
「あ、そこを左で、あの、公園あるんでそこでいいです」
「え、家まで送るけど」
「め、滅相もない!そんなご迷惑をかけるわけにはいきませんから!」
「いいのに、気にしないで」
どこまでも優しいんですね、隆司様…
ホロリ、あたしゃ涙が出そうですよ。
「大丈夫なんです、あの、公園から徒歩3分くらいなんで…」
「暗いし、危ないでしょ」
「あはは、あたしを襲うような変わった人はいませんよ」
「なんで?桃ちゃんかわいいのに」
隆司様がさらっと言ったちょうどそのとき、公園についた。
顔から火が出るかと思った。