桃の天然水‐桃天!‐
「桃ちゃん、何で来てるの?」
優等生、優等生、優等生…
呪文のように頭の中で繰り返される言葉。
「へ?学校にですか?」
「うん」
「電車です」
ハイ来たー。
俺は窓の外を見た。もう十分、暗いのは知っていたんだけどね。
「電車かあ…暗いよね、かなり……
あ、そうだ。俺バイクなんだよね。送ってあげるよ」
桃ちゃんが一瞬俺の顔をまじまじと見つめて、それから
「はひ?」
と妙な声を上げた。
「俺のせいで遅くなっちゃったんだもん、当り前だよね」
めんどくさいけどね。
顔に出さないように気をつけて、笑った。
「そ、そんな!!いいです大丈夫です!!」
「俺と帰るの、いや?」
確信犯。
至近距離の顔と目に、桃ちゃんは顔を真っ赤にする。
わー和むー。
「い、嫌じゃないですけど!!」
「じゃ、いいよね。帰ろう」
桃ちゃんの手を取って、有無を言わさず連れ出した。