桃の天然水‐桃天!‐
「大丈夫?乗れた?」

桃ちゃんがわたわたと後ろに跨った。
よかったー、横向き座りとかする人じゃなくて。
ああいうの気取っててウザいんだもん。

「は、はい!」

裏返りがちな桃ちゃんの声は正直凄く面白い。

「じゃーつかまっててねー?」
「ど、どこに」
「テキトーに…あ、俺の腹に手ー回してくれていいよ」
「そ、そんな!めっそうもない!」

めっそうもない、とか。
なんかさあ、何気に小難しい言葉知ってるんだね、桃ちゃんって。

「や、桃ちゃんが落ちたら困るからさ」

っていうか、事故ったら俺の免許に傷つくっしょ?

「だ、大丈夫です!体丈夫なんで、落ちても死なない…」


急に声がやんだので、なんだろーねーと思う。


「せ、先輩!あの、あたしやっぱり歩い」

なにをいまさら。

「うーん…あ、じゃあ、俺が寒いからしがみついてて、って言ったらどう?」
「…寒い?んですか?」


うそに決まってんだろーが。


「あ、あの、それは、あの」
「遅くなっちゃうよー?かえろーよー桃ちゃんー」


俺、早く帰って予習したりなんだりってあるんだよね。

予習しなくてもわかるから、まあいいんだけど…
明日に限って、ノート点検があるっていう噂を小耳にはさんだからね、一応確認しとかないと。
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