桃の天然水‐桃天!‐
「ふふ、こんにちは。話は間宮先生に聞いてるわ」
江崎先生は、後ろ手でドアを閉めながらあたしに笑いかけた。
本当に美人!!
なんで司書なんかやってんだろ?
女優のが向いてますって!!
心の中で転職を勧めるあたし。
明らかに不審だ。
…まぁ、昨日今日のことじゃ無いんだけどねー…りっちゃんに言わせると。
「なんかね、間宮先生、お家で急用が出来たみたいで、さっき慌ててお帰りになったの。それでね、今日は帰って良いって」
「え、ホントですか?」
「ええ」
江崎先生は、見掛けだけじゃなくて内面まで天使ッ!!
やったぁ!!
ドラマの再放送見れる!!
…と叫ぶのは我慢した。
「先生?」
「あぁ、ごめんね吉永君」
王子様が天使と会話をしている、それだけなのに…
それは普通の図書室を1000倍綺麗に見せるパワーを持っていたみたいで、あたしはキラキラに囲まれて幸せな気持ちになった。
…うん、分かりにくくてごめんなさい。
「じゃ、今日から1ヶ月、よろしくね」
「はい、もちろん」
ぽやーっとしていたら、江崎先生が居なくなってた。
会話を聞きのがしてしまったみたいで、猛烈に後悔した。
「桃ちゃん?」
「はっはいはい!!?」
「…もしかして、ヒマ?」
隆司様に見つめられた、2秒。
「超ヒマです!!」
あたしの頭から、ドラマの再放送のことなんて簡単に消えてしまっていた。