イチコイ日誌~苺色の恋記録~
 
「……切れてる」





 恐る恐る、目を開く。



 唇に指をかけ、


 切なげに顔を歪める――兄。


 強引だけど、ホントは優しい――大好きな人。



「治せっつったよな? やなことあると、噛むクセ」



 叱られるのは百も承知。


 その上で、しらばっくれる。



「何のこと?」


「トボけんな」


「……んぅっ!」



 噛み付くような始まり。


 それは、甘ったるい程トロけていって、





 ――1日1回、最低でもキスさせろ。





 無理やり取り付けられた約束の、本当の意味を、思い出したよ。





 ――おまえ、すぐ噛むから。



 ――おまえさぁ、何で抱え込むかなぁ……?



 ――おまえは、俺が見てやんねーとダメなんだ。
 
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