イチコイ日誌~苺色の恋記録~
「僕は、先輩にしか惹かれたことはない。そして、素直な気持ちだけを口にしてきたつもりです」
初恋は、戸惑うもの。
私の考えが、甘かった?
「先輩ほどの人なら、音楽は奏者の心の鏡だってこと、おわかりですよね?」
「……っ!」
「今から、僕にひとめぼれしてもらいます」
頬を撫でて、なんて優しげな宣戦布告をするの……。
「僕の心をお見せします」
ポロン――……
細い指がモノクロ鍵盤を叩いたら、まさかのまさか。
驚くほどに澄んだ音色が、私の中に流れ込む。
あれほど拒否していた彼の〝想い〟に、心が共鳴する……。