イチコイ日誌~苺色の恋記録~
 
「……泣くほど、惚れました?」





 いつしか聞き入って、


 まぶたを閉じた、ひとめぼれ。


 こんな恋って、アリ?



「……感動とか、してないし……」



 ふてくされて防音壁にもたれかかれば、ははっ! と無邪気に笑って、イスから立ち上がるきみ。



「僕の音色は、及第点ですか?」


「……」


「無言は肯定だって解釈しますよ?」


「……」



 肯定したわけじゃない。


 下手に口を開けば、揚げ足を取られるって思っただけよ。



 そっぽを向く私を、きみは愛しげに撫でるの。



「綺麗で、かわいいです。先輩」


「ちょ、ちょっと待っ!」


「もう待てません……」



 クロスした手のひらを取り払われて、


 アッシュグレーの瞳に、吸い込まれる……。
 
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