金魚の恋
どうでも良さそうなことにまで、我を張るんだ。
まあ、こっちが譲ってもいいんだけど、男の沽券にかかわるし…。

今まで無理してたのかなあ、合わせてくれてたのかなあ…
てっきりSF映画が好きだとばかり思ってたら、嫌がってばかりいる。

「たまには、ラブロマンスに!」
「そんなかったるいのは、イヤだよ」
「じゃ、別々に観ましょ。終わったら、マックにね」
「いいよ、いいよ、いいですよ。そうしましょうか」

とうとう、この間、別々の映画を観る羽目に。
あんなつもりじゃなかったのに。

寒い夜が終わり、輝く真っ白な銀世界。
昇り来る太陽でさえ恥じらいを感じるほどの銀世界。
重い雪を押しのけて、春の訪れを知らせる雪割草一輪。

今朝の天気の、なんと晴れ晴れとしていることか。
昨日までの、激しいザーザー降りの雨がうそみたいだぜ。

女ごころ。ホント、難しいもんです。
あの娘は、まだ子どもなのサ
そう言ってしまえば、みもふたもない。

卒業式。
そうだね、もうすぐだね。そして、僕たちの卒業式だ。
だってそうだろう? 君は、K市の大学に行ってしまうじゃないか。
「地元の学校に行くつもりよ」
そんな約束、信じてた訳じゃないけど、期待はしてた。

お父さんだろ? お父さんの、強い意向で、K市の大学なんだろ?
おいそれと行ける距離じゃない。
汽車に揺られ揺られて、半日か? 
日帰りなんてできる距離じゃない。
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