金魚の恋
「どこか、行きたい所ありますか?」
「いや、どこといっては…」

"誰も居ない、二人だけの世界に浸りたい…"
そんなこと、言えるわけがない。

そんな僕の気持ちを察してくれたのか、それとも君自身の気持ちがそうだったのか、
連れて行ってくれたのは、大学のキャンパスでした。
「私ね、ここに入りたいの。今の成績では、少し無理みたいなんだけど、入りたいの。
親にあまり負担をかけたくないから、私立には行きたくないの」

杜の都と言われるだけあって、たくさんの樹木でした。
月明かりの下、幻想的な世界に、どっぷりと浸りました。
君はたくさんおしゃべりをしてくれました。
僕と言えば、たゞ黙って聞き入っていたっけ。

「意外だわ。もっと、おしゃべりな人だと思ってた」
ドキリと、しました。手紙では雄弁な僕だけど、ホントは無口なんだ。

「感激してるから」
「まあ。そんな嬉しくなるようなこと」

"to、tomko!"

抑え切れない衝動に、悩まされ続けていました。
でも君は、そんな僕の気持ちにまるで気付いてくれなかった。
勇気の無さが、情けなかった。

「寒くない?」
「全然!寒いの?」
ホントは、すごく寒かった。心の中に、冷たい風が吹きまくってた。
tomkoに、暖めて欲しかったんだ、ホントは。
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