金魚の恋
飯を食い終わってから、後片付けをしたんだけど。
よく新婚家庭でさ、旦那が手伝ったりなんかしてるだろ。
みっともねえ! って思ってたけど、俺もそれをしてんのよ。なんかさ、楽しいんだよな。
kazukoの隣に立ってさ、kazukoが洗い終わった食器を、俺がかごの中へ並べるのよ。
嬉しいんだよな。変な感じ、実際。

「臭~い! シャワー、浴びてよお!」
突然、kazukoが言い出すんだ。びっくりだよ。
汗をびっしょりかいてるから、汗臭いことは分かるけど。そんな大声で言わなくなったって、いいじゃねえか。

風呂場から出たら、ちょっと変な雰囲気が漂ってた。俺もさ、正直のところ、急いで出はしたんだけど。
ぬる目のシャワーを浴びてる内にさ、この家に二人っきりだって、気付いたわけよ。
俺が気付いたってことはだよ、当然kazukoだって気付いてるわさ。

俺としては、黙って帰られちゃ困るわけよ。せっかくのチャンスでもあるわけだし、と言って焦って失敗するのもイヤなわけだし。
どっちにしても、平静を装いながら、風呂場を出たわけなんよ。
で、次の言葉が難しい。

「kazukoォ? シャワー、浴びてっかあ?」
俺としては、“浴びてくか?”のつもりなんだけど。どうも“浴びてっかあ?”って、言っちゃったみたい。
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