金魚の恋
tomko!

ぎこちない会話が、続きましたね。
と言うよりは、僕が緊張していただけかな?
君はたくさん 話してくれましたね。
「ホントはね、もっとお洒落して来たかったんだけどね。
制服なのよ、これ。通称薄情高のね。でも、紐リボンだけは外してきたの」
「そ、そうなんだ」

“ステキだよ、とっても!”
そんなひと言ぐらい、付け加えても良さそうなものなのに。
喉がひりついて、どうしても出なかった。
「風邪、惹いてるの? 喉、痛いんじゃない」

「心配かけて ごめん。緊張してるんだ、実は。
出掛けに、クラスメートに冷やかされちゃってサ」
「ええぇっ! なんて、言ってた、私のこと」
「うん。美人だっ、て。羨ましがられた、ちょっとこずかれたりもしたしサ」
「うわあ! やっぱり、お洒落してくれば良かった。
あなたが 制服だから、私も制服にしたんだけど」

「十分だよ それで。これ以上ステキになられたら、ぼく、一緒に歩けないよ」
「無理しちゃってえ。お世辞が 見え見えだぞお」

どん! って、僕の背中を力いっぱい叩いたんだよ、tomko。
思わず、咳き込んじゃった。

「ごめんね、痛かった? ごめんね、ごめんね。」
何度も謝りながら、僕の背中をさすってくれたね。嬉しかった、ホントに。
君の温もりが、その手を通じて 伝わってきました。

それからだね、会話がスムーズになったのは。僕も、緊張がほぐれました。
色んな話をしたね。と言っても、大半は君の学園生活が主だったけど。
だって僕に話をさせてくれなかった じゃないか。
でも いいんだ。僕なんて 話すことは何もないんだから。

でも、ハイネが好きだってこと 嬉しかった。
僕も 大好きなんだ。男のくせに変だろ? 
でも 君は目を輝かせて
「嬉しい! やっぱり 私の好きなT君だあ。」
って、僕の腕に…。

君のふっくらとした その…あれが……ドキッ! だった。
でも君は、まるで無頓着だった。ひょっとして、誰にでもそうなの?
だとしたら…少し 淋しいや。
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