金魚の恋
bokuにしても、teikoのようにグイグイと引っ張る女の子は初めてで、新鮮だったから。
いやいや、本音で言うと、好きになっていた。
「ククク…どっちがいい? bokuさんのお好きな teiko になって、あ、げ、る、ふふ…」
上目遣いで、bokuをからかう。

体が、カッと熱くなったような気がする。
“しっかりしろ、オレ!”

「別に、お詫びなんて…」
「だってさ、気を悪くしたでしょ? S君と仲良く話し込んだりして」
「そ、そんなことあるわ、、」
「いいの! わかってるから」

teikoの指で、bokuの唇がふさがれた。
ビックリしたけど、なんだか甘い香りがした。

「そっちに移るね」
突然、teikoがbokuの隣に移ってきた。
そしてピッタリと、体をくっつけてくる。
さっきの甘い香りが、bokuの体全体を包みこんでくる。

「bokuさんね、タイプなのよ。
S君はねだめえ! 
どうもね、あゝいったナヨナヨ系は生理的に受け付けないの」


おゝ愛しき人よ、ぼくは君に何を与えよう。

この燃え盛る胸の炎を君の胸に?
いやいや、その炎は、
冷たく閉ざされた氷の心をきっと溶かし、
君に火傷を負わせることだろう。

溢れ出る生命ちの水を君の唇に?
いやいや、その水は、
硬く閉ざされた鉄の堤をきっと突き破り、
君を溺れさせてしまうことだろう。

ほとばしる愛のことばを君の耳に?
いやいや、そのことばは
頑なに悪魔の声を聞く蝸牛を壊してしまい
君を無音の世界に追いやってしまう。

おゝ愛しき人よ、ぼくは君に何を与えよう。

君の求めるもの、全てをぼくは与えよう。
この生命ちを!と言われれば、
喜んで我が胸に恋の剣を突き刺すだろう。

だけど、
これだけは言わないでおくれ。
それを聞くや否や、ぼくは
地獄の、真っ赤な業火の中へと落ちる。

“私の前から 消えて!”

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