こちら、柊学園文化部!
蘇生

腐食された桜

柊学園に1年生が入学し、早2週間がたった。
柊学園には、校舎の周りには大きな森が、取り囲むようにある。

まだまだ、森の木々は蒼々としていた。
柊学園の校門の入口には桜が植えられている
しかし、その木は年々腐食していた。
桜の花も咲くことはなく、抜いてしまおうという計画が何年もあり、この年の夏に切ってしまうらしい。


「おはようございます、」
灰色のスーツに身を包み、黒い眼鏡が特徴的な柊学園の教頭が、腐食されていた桜を見つめる少女に挨拶した。
「あ、白井教頭先生、おはようございます。」
少女は桜から目を離し挨拶を返した。
「白井教頭先生、この桜は切られてしまうんですか?」
少女は桜に視線を戻し尋ねると、教頭は静かにはい、と言って頷いた。
「そうなんですか…すみません、ありがとうございます」
教頭はいいえ、構いませんよ、と微笑み、少女に踵を返す。少女は桜に背を向け教室へと歩いた。


「おはよう!綾瀬さん!!」
綾瀬さん、と呼ばれ少女は振り向いた。
綾瀬つばさ、それが少女の名前だ。
「おはようございます、西さん」
微笑みながらつばさは答える。
つばさは淡々と準備をして、教室を後にした。



向かった先はあの、切られてしまう桜だった。
つばさは桜を撫で、体を預けた。


―切られたくない―


つばさの脳内に響いた声は切なく、聞こえるか聞こえないかの声だった。


―まだ、見ていたいの―



1時間目、教室に戻ってはこなかった。

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