白色なみだ .*
苦しいけど、好き
「…はぁ…、っはぁ…」
屋上に来た私は、
息を切らしながらフェンスにもたれる
ーークシャッ
ぎゅっと握っていたパウンドケーキの袋は
力を込めすぎたせいか
クシャッと歪んでしまっている
「…結局、渡せなかった…」
呟いた言葉は
冷たい風に去らされて…
「…っ、ふっ、…ぅう…っ」
ポツリ、ポツリと落ちた涙は
コンクリートの床に染み込んでいく
私の頭のなかで
さっきの一之瀬くんの言葉が響く
<俺、好きな人がいるから受け取れない>
そうだよね…
佳奈さんが好きなんだもん
好きじゃない人からもらうなんて、
困っちゃうよね…
お礼、とかいって渡すなんて
一之瀬くんを困らせちゃうよね…
私、なんで気づかなかったんだろう
パウンドケーキを渡したところで
一之瀬くんの気持ちは、変わらないのに…
「…ふっ、ん…っ」
なんで、
なんで、こんなに苦しいんだろう…
苦しいのに…
なんで、こんなに好きなんだろう…