鏡怪潜〜キョウカイセン〜
命懸けの夜
午後20時過ぎ、警察での事情聴取が終わり、お母さんに迎えに来てもらった私は、家に着くなり自分の部屋にこもり、ベッドに横になった。


テーブルの上に置かれている鏡を伏せて、見えないようにしてから。


咲良が死んだ……高校に入って最初に出来た友達で、一番仲が良かったのに。


悲しいはずなのに、まだ死んだなんて信じられなくて涙が出ない。


唐突に訪れた死。


残虐な死。


そして鏡の中のナニか。


あまりにわけのわからない事が起こりすぎて、頭の中が整理出来ていない。


「ナニかに気付いたのに、気付かないフリが出来るか……かぁ」


もしもあの時、咲良が影宮さんより先に手を洗わなかったらどうなっていたんだろう。


影宮さんがナニかに気付いて、死んでいた?


それとも、影宮さんは気付かないフリをしたのかな。


何にしても、今までただの作り話だと思っていた怪談が、入学して二年目で現実のものになってしまった。


私はどうすれば良いんだろう……。


咲良を失って悲しいのに、涙は出ない。


ナニかを見てしまって不安なのに、まだ大丈夫と思っている部分がある。


どの感情も中途半端で、何一つとして実感が湧かないままだった。
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