鏡怪潜〜キョウカイセン〜
「はぁ……はぁ……い、今の何!?まさかナニかが?」


考えたくはないけど、ナニかじゃなかったら、他に音を出すような人は誰もいないから。


ガラスを手で叩くような、そんな音だ。


鏡の内側を叩いて、私を脅かすように音を出したのかな。


そうだとしたら……その音に気付いたという事に気付かれたら殺されるのかな。









……いや、何かそうじゃないような気がする。


はっきりわかってるわけじゃないけど、もしも私の背後にいたら、それに気付かないはずがないよね。


特に音なんて、耳でも塞いでなければ確実に聞こえてしまうのだから。


「……あー、もう。わかんない。トイレを済ませて早く戻ろう」


考えようとしても、まだ半分パニック状態で、まともに考える事なんて出来ないから。


廊下の奥にあるトイレまで歩いて、そのドアを開けると……。













私は、真弥ちゃんが「気を付けて」と言った意味を、そこで理解する事が出来た。


小さな個室の正面に洋式便器があり、私の右側に洗面台がある……。



そう、うちのトイレにはない鏡が、この家には設置されていたのだ。
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