【短編】フィガロの葉桜
フィガロは、そう言った。


だが、その言葉の矛先にはネロだけではなく、もう一人いたような気がした。


ネロの恐れは止んでいた。


そして知った。


辛い過去を持つのは自分だけではないことを。


あの時の弟の味は今でも覚えてる。


苦かった。不味かった。


食べては何回も吐いた。


それでも食べた。


恨みを持って、
憎しみを抱いて、
殺意を孕んで、味を覚えた。


弟は、殺されたのだ。


衰弱死したんじゃなく、父と母に殺されたのだ。


絶対に復讐してやると決めた。弟の仇を討つと。
そのために生きる必要があった。
そのために弟を喰らった。


全ては復讐のため。


それが、ネロの生きる指針だった。
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