【短編】フィガロの葉桜
ネロは、父母への復讐は成功する。


だがその後、ネロは親殺しの罪で王国兵団に捕まり、
魔女の紋様が刻まれたブロードソードを奪われ、
それのせいで魔女審判にかけられて、
拷問にかけられて苦悶のうちに死ぬ。


そこにはフィガロが、それにネロが望むような喜びや達成感、そして未来はない。


フィガロの数日後を見通す予知は、醜悪な未来を告げたのだ。


フィガロは外に出た。既にネロの姿はない。


葉桜を見上げる。


「兄さん。……私は、……何故兄さんを喰らったのでしょう。


私は、……何故生きたかったのでしょう」


フィガロの問いに葉桜は葉をざわめかすだけ。まるでそれが答えだと言わんばかりに。


「……私は、もしかしたら仲間が欲しかったのでしょうか。


同じ辛苦を共有する仲間が……。


それならば、ネロが出来ました。


弟みたいで、親友みたいで、……息子みたいな仲間が。


ですがそのネロですら、世界は復讐にかり立たせ、私から奪っていきました。


兄さんだけ……仲間がいるのは………………………ズルい」


こんな世界なら、私は…………………







いらない。


葉桜はフィガロの拒絶に呼応するように、ザァ、と葉音を鳴らした。
< 14 / 16 >

この作品をシェア

pagetop