傘をどうぞ。

テーブルに向かって振り向く時に、はらりと揺れた黒髪を僕は見つめていた。

名前が彫り終わるまでの数分間、さっきの会話以降僕達は言葉を交わさなかった。

話しかけちゃいけないような気がした。

声をかけようとしても、彼女の背中は艶やかな黒髪が守っている。

僕は黙って傘ができるのを待った。
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