傘をどうぞ。
トクベツな傘
「八雲さん。お待たせしました。」
その言葉に我に返る。
「あぁ…!ありがとうございます。」
傘ができるまで、ただぼーっと彼女の背中を見つめ、何も考えていなかったんだ。
渡された傘は心無しか、さっきよりも重く感じた。
『YAKUMO KIRISAKI』そう彫られた傘の持ち手をなぞる
滑らかな窪みに触れると、指先にチクッとした痛みが走る
紙で切ったときのように、細く小さな切り傷に血が滲んでいた