傘をどうぞ。
大通りを避けるようにして、細い路地に入りそこをゆっくりと歩く。
夜が近づき、薄暗くなった路地を街の人は皆『不気味だ』というけれど、
それも僕は好きだ。
耳に響くのは雨の音と水たまりに踏み落とされる自分の足音。
雨の日にこの路地に入ると、慌ただしい日常から離れて落ち着くことができる。
それでも、壁に描かれたペイントや転がったゴミ箱、潰された空き缶の死骸など
落ちているものが目に入るたび僕は少しずつ現実に戻していく。