傘をどうぞ。

いつでも心にぽっかりと大きな空洞があって、それを埋める方法を独りになってよく考えている。

この時間がないと、もっと空洞が広がってしまう気がした。

僕にとって雨はそんな時間を彩る心地よいBGMみたいなものだから、雨が降らない路地はやっぱりつまらない。

早く路地から出ようと足を早めた。

その時

『ポタ …ポタ』と

小粒の雨の音が聞こえた。

服に小さな雫が染み込んでいる。

雨が降って来たんだな。

立ち止まり、少しウキウキした気分で新しく買った傘をさした。
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