卯月の恋
「…参ったな」


礼央が呟くようにそう言った。

困ってる。
そうだよね。
前に住んでた部屋の隣人にこんなこと言われても。

わかってる。

勝手に好きになって、勝手に傷ついて、勝手に泣かれてもね。
困っちゃうよね。


「…ごめん。すぐ泣く女、嫌いなんだよね」

「…すぐ泣く女は嫌いだけど」


礼央は顔を覆っていた私の手をそっと外すと、困ったように笑って言った。



「すみれのことは好きだから。だから、参ったな」



―…え?
今、なんて?



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