卯月の恋
「なんかどーでもよくなって仕事やめて。ぶらぶらしてたら、ホストにスカウトされて。最初は世の中の女を騙してやろうとか思ってた。復讐っていうか。人間ってみんな嘘ばっかだから」

礼央は、眉を下げて悲しそうに笑った。

信頼してた人に裏切られて、嘘をつかれて、人を信じられなくなった礼央。


――平気で嘘つくし、平気で女泣かすよ――


いつだったか、礼央はそう言った。


もうこれ以上、人から傷付けられないように、そうやって自分を守っていたんだね。


「すみれに出会った時も最初はいいところで働いてるし、いい客になるかなーなんて思った。だけど、すみれバカなんだもん。あんまりバカだからなんか心配で…。バカなくせに、まっすぐな目で好きだとか言うし。いつの間にか、すみれに惹かれてた」


礼央は私をバカだと言いながらも、照れ臭そうに後ろ頭をくしゃっとかいた。

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