卯月の恋
「転職して、本当はすぐ会いに行こうと思ってた」


頭の上の方から、礼央の声がする。



「だけど、やっぱり怖くて。どんな顔でいけばいいかわからなくて。だからさっき、すみれが歩いてきた時、すげー嬉しかった。わざと…」

礼央が口ごもる。
私が顔をあげると、礼央は恥ずかしそうに笑って言った。


「わざとぶつかったんだ。すみれに」


なにそれ。
本当に礼央はうさぎみたい。

さみしがりやなくせに、声には出さないで、足をダンダンしてるんだ。



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