卯月の恋

先輩の忠告

まだ入社して一ヶ月足らずの私は職場ではほとんど役に立たない。

今のところ、主な仕事は郵便物の仕分けやコピー用紙など消耗品の補充など。

私を教育してくれてるのは三年先輩の秦野さんだ。
スラリとした美人で仕事もテキパキこなす秦野さんは私の憧れ。

「宮内、お昼どうする?」


お昼休み、秦野さんがまとめていた髪をほどきながら近づいてきた。

ふわっといい香りがして、女子力高いなぁ、と思う。
私なんて、下手したらキリコの匂いがしていそうだ。



「今日は銀行に行かなきゃ駄目なんです。だから、帰りにコンビニ寄ってなんか買ってきます」

「銀行?お給料入ったからって、パーっと使っちゃ駄目なのよ?」

はい、といい返事をして、お財布だけ持って立ち上がる。

秦野さんはたまにランチに誘ってくれる。
おしゃれな見かけによらず、秦野さんは丼ものとかラーメンが好きで、よく二人で食べに行く。


「コンビニで豆大福、買ってきて」


部署を出るとき、秦野さんはヒラヒラと手を振ってそう叫んだ。



< 11 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop