卯月の恋
定時の五時に仕事を終わらせると、ロッカールームに駆け込んだ。
秦野さんには用事があるからと前以て言っていたけど、課長にでも見つかって残業を言い渡されると大変だ。
とは言っても、まだ戦力にならない私は、残業を言い渡されたこともないのだけど。

女子力が高そうな、ピンクの封筒に入れた三枚の千円札。
それと、帰りに駅の近くのケーキ屋さんでマドレーヌを買った。

甘いものが好きだといいのだけど。
駅から走りながら、そんなことを思う。

なんとなく、前髪を手櫛で直してから、今朝と同じようにチャイムを鳴らした。
もちろん、一度だけ。

腕時計を見ると、5時45分。



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