卯月の恋
「このサラダ菜、私がベランダで育てたんです」

サラダ菜やサニーレタス、それにトマトとキュウリのグリーンサラダを差し出しながら言った。
手作りの玉ねぎのドレッシングも一緒に。

「ベランダで?」

サラダを食べていた玲音は手をとめて私を見る。


「キリコに無農薬の野菜を食べさせたくて、いろいろ作ってるんです」


そのせいでうちのベランダは足の踏み場もないんだけど。


「それ、俺が食べちゃっていいの?」

「もちろんです」


出来るだけ無農薬のものを、出来るだけ手作りで。


お母さんはいつもそう言ってた。

その意味が、分かったよ。

大切な人には、私もそうしたいもん。

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