卯月の恋

ヤキモチ

総務部総務課総務係。
それが私の配属先だ。


私たちの仕事は会社の縁の下の力持ちだ、と秦野さんは言う。

「他の部署ではあてはまらない業務が全部回ってくるかんじよね」

秦野さんは事務用品の発注方法を教えてくれながら呟く。

「ちょっといい?」

二人でパソコンとリストをにらめっこしていたら、いつのまにかすぐ後ろに人が立っていた。


「あ、お疲れさまです」


振り返ると、そこにいたのは秦野さんの同期でマーケティング部の川崎さんだった。
マーケティング部といえば、各部から集められたよりすぐりの人たちが配属される部署だ。
私には縁遠い。


「すみれちゃーん、明日14時、第3会議室、空いてる?」

こういう用件はほとんどの社員は内線で言ってくるのに、川崎さんはいつも直接言いにくる。
出張の時の切符や宿泊先の手配の時なんかも。

フロアも違うのに、丁寧な人だなぁ、と思う。


「川崎くん、会議室の予約は私に言ってよね」

秦野さんの言葉に、にこにこしていた川崎さんが、露骨にいやな顔をする。


「あ、秦野さんいたの?」


「あんたねぇ!」


「秦野さん、落ち着いてください!」



秦野さんはぶつぶつ言いながら、パソコンで会議室の予約を見始めた。


「空いてる。以上」

「サンキュ」

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