卯月の恋
「ああいう社交辞令にはなんて答えるのがスマートなんですか？」


お昼休み、会社から少し離れた場所にある秦野さんのおすすめのラーメン屋さんのカウンターで、ラーメンを待つ間、秦野さんに聞いてみる。


秦野さんは、私の顔をまじまじと見てから、ふふっと笑う。

「社交辞令だって…川崎くんかわいそ」

かわいそう、と言いながらも秦野さんは楽しそうだ。

「百戦錬磨の川崎くんも天然の宮内には敵わないってわけね」


「天然？」


「なんでもない」


秦野さんはラーメンが運ばれて来たのを見て、髪を素早くまとめる。


「食べよ。ラーメンのびちゃう。宮内はスマートに返さなくていいの。ストレートに嫌なら嫌です、でいいんじゃないの？」


嫌なら嫌です。
社会人たるもの、先輩にそんな返し方をしちゃいけない、と思ってたんだけど…。


でも、ラーメンを嬉しそうにすする秦野さんを見ていると、これ以上おしゃべりをしていたら「早く食べなさい、麺が伸びちゃうわよ」なんて叱られる気がして、私も割り箸を手に取るとラーメンを食べ始めた。


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