卯月の恋
でもね、玲音。
私はキリコにヤキモチを妬くんだ。

キリコを見る時は、優しい目をするから。
キリコに話しかける時は、優しい声になるから。

私にも笑ってほしいな、って。
私も、すみれってよんでほしいなって。

玲音はまた私の横に座ると、腕をのばして私の髪をさわった。


するする、すとん。
するする、すとん。


私は三角座りをすると、膝小僧の上に顎をのせた。


玲音は今、何を考えてるんだろう。
髪をさわるなんて、玲音からしたら日常茶飯事なのだろうか。

そう思うと、チクリと胸が痛んだ。



しばらく髪をさわった後、玲音は突然立ち上がった。


「帰る」

ボソッとそう言うと、靴をはいた。

「ごちそうさま」


ドアが閉まって玲音が出ていってすぐ、隣のドアが開く音がした。


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