卯月の恋
「…私、玲音がすき」


玲音があまりにも悲しそうで寂しそうで、気がついたら、私はそう言っていた。

笑ってほしくて。
私を見てほしくて。


だけど。


「あー、もうそういうのいいから」


玲音はドアにもたれかかって、片手の手のひらで目を覆うとそう呟いた。


「好きになるのは勝手だけど、俺はアンタを好きになったりしない。だから、そういうの無駄だから」



俺はアンタを好きになったりしない。


うん。
それでも…。

それでもね。



「私は玲音が好きなの」


もはや、この言葉で玲音が笑ってくれたり、私を見ることはないと分かっていても、伝えたい。



「…アンタは俺のなにを知ってるんだよ?名前も知らないくせに。俺のこと、なんにも知らないくせに」


「そうだね。名前も知らないけど、好きなんだもん」


この気持ち、なんて伝えたらいいかな。
玲音のことが心配で、おいしいものを食べさせたくて、笑ってほしくて、幸せでいてほしくて仕方ないんだよ。


玲音が喜んでくれるなら、私きっと空だって飛べるよ。
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