卯月の恋
帰りのタクシーの中で、隣に座る男の人をちらり、と見てみる。
男の人は相変わらず不機嫌そうに窓の外を見て、長い脚を窮屈そうに組みかえた。
膝の上のゲージの中では、キリコがすやすやと寝ていた。
この人がいなかったら、キリコはどうなっていたか考えるとまた涙が出そうになる。
お礼を言わなきゃ。
さっきからずっとそう思っているのに、なんだか話しかけるなオーラがばしばし出ていて、なんだか緊張する。
「あ…あの」
意を決して、出した声は自分でも笑っちゃうくらい小さかった。
それでも男の人はチラッと私を振り向いてくれた。
「あ…ありがとうございました」
私がなんとかそれだけ言うと、男の人はまた窓の外に目をやる。
「あのぉ…私、宮内すみれ、って言います。このうさぎはキリコです。あなたのお隣に三月の末に引っ越してきました。これから…あの、よろしくお願いします」
男の人は窓の外を見たままだ。
…無視?
こっちは名乗ったんだし、お隣さんなんだから、名前くらい教えてくれてもいいよね?
「あのぉ…お名前を伺ってもよろしいですか?」
男の人は相変わらず不機嫌そうに窓の外を見て、長い脚を窮屈そうに組みかえた。
膝の上のゲージの中では、キリコがすやすやと寝ていた。
この人がいなかったら、キリコはどうなっていたか考えるとまた涙が出そうになる。
お礼を言わなきゃ。
さっきからずっとそう思っているのに、なんだか話しかけるなオーラがばしばし出ていて、なんだか緊張する。
「あ…あの」
意を決して、出した声は自分でも笑っちゃうくらい小さかった。
それでも男の人はチラッと私を振り向いてくれた。
「あ…ありがとうございました」
私がなんとかそれだけ言うと、男の人はまた窓の外に目をやる。
「あのぉ…私、宮内すみれ、って言います。このうさぎはキリコです。あなたのお隣に三月の末に引っ越してきました。これから…あの、よろしくお願いします」
男の人は窓の外を見たままだ。
…無視?
こっちは名乗ったんだし、お隣さんなんだから、名前くらい教えてくれてもいいよね?
「あのぉ…お名前を伺ってもよろしいですか?」