卯月の恋

二人きりの夜

一番、小さい服を貸してくれたんだと思うけど、やっぱり玲音の服は私には大きかった。

ハーフパンツは腰のひもを思いきりぎゅっと結んでなんとかはいた。

おっきめのTシャツにぶかぶかのハーフパンツ、まるでB系ファッションかと突っ込みたくなる。


そっと、バスルームのドアを開けて廊下を覗くと、奥の部屋から灯りがもれている。


廊下には扉が三つあって、ひとつはこのバスルーム、奥は部屋、もうひとつはトイレだろう、と推測する。


こんなところで、もじもじしていても仕方ない。
そっと奥の部屋に近付くと、玲音がちょうど出てきた。


「服、貸して。洗濯するから」

「そっ、そんな…いいです」


首をぶんぶんと振りながら答えると、

「いいから早く貸せ」

玲音が私の手からワンピースを取り上げる。

バスルームに入ると、中からピピッと洗濯機を回す電子音が聞こえて、玲音はすぐに出てきた。


「大家に電話したけど、誰も出なかった。少ししてからまた電話したら?」

「大家さん!!」


そうだ、その手があった!
大家さんならスペアキーを持ってるし、部屋に入れさえすれば、私もスペアキーを持ってるじゃないか!


ホッとして思わず笑顔がこぼれた私を、玲音はあきれたように見下ろして、やっぱ服でかかったな、と呟いた。


それから、

「うちの大家、すげーじいさんだから、もう寝てるかもな」

さらっと絶望的な言葉を口にした。


一気に私の顔から笑顔が消えていくのを、玲音は意地悪な顔をしながら見ていた。


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